もう行列に並ばない。スマートロック×ファストパスでトイレを価値へ!:RestPass
- Yoko Yagi

- 5 分前
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関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家たち。今回は、スマートロックとファストパスの組み合わせでトイレのシェアリングエコノミーを提供するRestPass株式会社の磯谷 拓郎代表取締役にお話を伺いました。
取材・レポート:垣端たくみ(生態会事務局)
八木曜子(生態会ライター)

磯谷 拓郎(いそがい たくろう)氏 略歴
1982年生まれ。熊本出身。東海大学 応用情報科学部。NTT西日本在籍中。フロントエンドでのユーザ対応から、技術サポート、100名を超えるセンタ運営を経験。事業計画、商品主管、センタオーバーヘッド、人材育成、流通、調達、開発など、幅広い分野の経験と、得意とする組織マネジメントにより強力にプロジェクトを推進。学生時代にトイレが見つからなくて大事故を起こした原体験から2025年8月RestPass株式会社を創業。
トイレをコストから資産へ
生態会ライター八木(以下、八木):本日はありがとうございます。早速ですが、Restpassの事業概要を教えてください。
RestPass磯谷拓郎代表(以下、磯谷氏):私たちが提供しているのは、「トイレのシェアリングエコノミー」です。スマートロックなどのデバイスをトイレの個室に設置することで、入退室や予約状況をデジタルで制御します。ユーザーは専用アプリを通じて、今どこに空いているトイレがあるかを探し、必要であれば予約して、行列をスキップして利用できる。そんなプラットフォームを構築しています。
目指しているのは、どこにいても気兼ねなく、快適なトイレにアクセスできる世界です。これまでトイレは店舗や施設にとって掃除や水道代がかかるだけのコストと見なされてきましたが、私たちはそれを、収益を生み、顧客を呼び込む価値ある空間、資産へとアップデートしていこうとしています。
現在は、このビジョンの実現に向け、まずはデバイス不要で利用できる「マイニング」サービスから先行して展開しています。
八木:そもそも、なぜトイレという、ある種タブー視されがちな領域に踏み込んだのでしょうか?
磯谷氏:実は、私自身に一生忘れられない原体験があるんです。学生時代、どうしてもトイレが見つからず、間に合わずに大事故を起こしてしまったことがありまして(笑)。あの時の絶望感と、尊厳を失うような感覚は、今でも鮮明に覚えています。
それから十数年が経ち、AIや宇宙開発が進む一方で、街中のトイレ事情はちっとも変わっていません。相変わらずイベント会場では長蛇の列ができ、トイレは不足している。公衆トイレを1箇所新設するのには約4,000万円ものコストがかかるため、自治体も簡単には増やせません。
一方で、日本全体でのトイレ利用回数は年間で約1,500億回。これほど巨大な需要があるのに、供給がこれほどアナログなまま放置されている領域は他にありません。誰かがやらなければならない、なら私がやる、という使命感からスタートしました。
八木:トイレの行列は女性のわたしにも身近な問題です。行列を解消するために、具体的にどのような戦略を立てていますか?
トイレの「ファストパス」と「マイニング」でアプローチ
磯谷氏:私たちは「予約&ファストパス」と「トイレマイニング」という、時間軸の異なる二つのアプローチを組み合わせています。
まず「ファストパス」は、まさにテーマパークのような体験です。どうしても今すぐ利用したい、あるいは並びたくないという方のために、優先的に個室を確保できる仕組みです。短期的には、これで行列をパスするという選択肢を提供します。

一方で、中長期的に重要なのが「トイレマイニング」です。これは直訳すると、トイレの発掘です。街中の商店街や、小規模・中規模の店舗には、実は外部に公開されていないトイレがたくさん眠っています。これらをRestpassの仕組みでネットワーク化し、誰もが気軽に借りられるシェアトイレとして世に掘り起こしていく。この使えるトイレの母数自体を圧倒的に増やす活動こそが、行列問題を根本から解消するカギになると考えています。
八木: 今、このビジネスが成り立つ、あるいは普及すると考える理由はどこにありますか?
磯谷氏:テクノロジー、マインド、社会的情勢、の3つのパズルがピタリとはまったからです。私が事故を起こした当時にはなかったスマホが普及し、リアルタイムの予約と決済が日常になりました。また、アイカサやチャージスポットといったシェアサービスの普及により、自分の困りごとは、近くのシェア資産で解決する、というマインドが消費者に根付きました。
さらに、社会的な追い風も非常に強いです。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に合わせたトイレ環境の整備や、内閣府が推進する女性の活躍支援、さらには建築基準法の見直しなど、国を挙げてトイレの質と量を問い直す時期に来ています。注目が集まっている今、私たちがプラットフォームを提供することの意義は非常に大きいと感じています。
店舗への導入メリットと、防犯という大きな壁
八木: スマートロックの開発はどの程度進んでいるのでしょうか?
磯谷氏:実は、スマートロック自体は物理的なデバイスとしての汎用的な鍵の新規開発・設計フェーズです 。正直に言うと、トイレのスマートロック化は一筋縄ではいきません。一番の難関は、トイレのドアノブや鍵の形状があまりにも多種多様すぎるという点です。家庭用の玄関ドアとは違い、公共のトイレや店舗の個室はメーカーも型番もバラバラ。それらすべてに適合し、かつ高い耐久性を持つ汎用的な鍵機構をゼロから設計するのは、莫大な開発コストと技術的な試行錯誤が必要です。こうした物理的な制約をクリアしつつ、安価に量産できるデバイスを作る。これが私たちが今直面している壁です。
八木: なるほど。だからこそ、まずはデバイス不要の「マイニング」から先行させるのですね。
磯谷氏: その通りです。デバイスが必要な「ファストパス」は将来像として描きつつ、まずはアプリ上で完結する「マイニング」を先行させます。店舗の方にスマホ画面を提示して利用する形なら、今すぐ始められますから。プロトタイプは動く状態にあり、2026年4月24日よりβ版のリリースとなり、東京・大阪の一部でスタートしています。
八木: 店舗側がトイレを貸すことには抵抗もあるかと思いますが、そこはどうクリアされていますか?
磯谷氏: 店舗様には初期費用無料で導入いただき、利用料の一部を還元するレベニューシェアで、トイレを収益を生む資産に変えます。
店舗の業態に合わせた付加価値をセットにすることも考えています。例えば美容室ならパウダーコーナー利用、ホテルならシャワーブース、観光地の小売店なら手荷物預かりをセットにする。トイレをきっかけに来た人がそのまま顧客になる動線を作ることで、トイレを貸す行為を新規顧客との接点にします。
八木: コンビニなどで夜間にトイレを閉鎖する動きもありますが、解決策はありますか?
磯谷氏:そこがスマートロックの出番です。閉鎖の理由は防犯やマナーへの不安。RestPassなら決済情報や本人認証と連動して鍵が開くため、誰がいつ使ったかが明確になります。身元が保証された状態で利用されるため不適切な利用が激減し、店舗側も安心して夜間もトイレをオープンにできるようになります。
八木: 非常に画期的なビジネスですが、進める上での壁はありますか?
磯谷氏:最大の課題が、この仮説実証のための場所を借りられない、という問題です。私たちは阪急阪神不動産さんや南海電鉄さんといった大手鉄道会社さんとも議論を重ねているのですが、混んでいる場所ほど、既存客への影響を恐れて外部に開放できないという構造的な問題に直面しています。この壁を突破するために、まずは私たちの想いに賛同いただけるパートナーを見つけ、最初の成功事例を作りたいと考えています。
異色のチームが描く、トイレのその先にある未来
生態会事務局 垣端(以下垣端):チーム構成も非常に個性的ですね。
磯谷氏:私自身は現在もNTT西日本に在籍しながら、二枚目の名刺としてこの活動を率いています。また、経営陣には強力なスペシャリストが集まりました。取締役COOには、ウェディング業界の「CRAZY WEDDING」創業メンバーである従兄弟の榊 伸一郎。執行役員には、海外の高級自動車メーカーやメゾンブランドといった世界的なブランドのPRを手掛けてきたブランディングのプロであり、私の実弟でもある磯谷亮太が参画しています。
八木:磯谷さんはNTT西日本の社員と兼務されていらっしゃるんですね。なぜNTT西日本という巨大な組織にいながら、あえて個人として、スタートアップという形でこの事業を立ち上げたのでしょうか?
磯谷氏:よく聞かれるのですが、大企業のスピード感や枠組みでは、このトイレという生々しい現場の課題を解決するのは難しいと判断したからです。実は日本トイレ協会などの専門家組織の方々とも議論を重ねてきましたが、そこで痛感したのは、トイレ問題は単なる設備の話ではなく、維持管理や清掃、さらには防犯といった極めて泥臭い運用の問題だということです。
実際に商店街の一軒一軒を回って、トイレを貸してください、と頭を下げ、スマートロックを取り付けて回るのは、今の私のような当事者にしかできない。既存の組織が手を出せていない清掃事業の効率化やドラッグストアとの連携といった未開拓の領域へ、しがらみなく最短距離すすむべく、私はこの道を選びました。
八木:では今後のスケジュールと、将来的なビジョンについて教えてください。
磯谷氏:現在は「マイニング」用のアプリが完成しており、実証実験に漕ぎ着ける事が出来ました。今後プレスリリースを出し、大阪梅田や東京といった、利用者が多くトイレ需要が極めて高いエリアにて実証実験をスタートしていきます。 将来的な展望としては、単なるトイレ予約にとどまりません。私たちはトイレプラットフォームをベースに、アプリ広告や、人流データの活用、さらにはヘルスケア領域への展開を視野に入れています。例えば、ドラッグストアと提携してトイレ内でお薬を買えるようにしたり、排泄データから健康状態をアドバイスしたり。トイレという誰もが必ず立ち寄る個室空間を、人生を豊かにするステーションへと進化させたいと考えています。
八木:最後に、読者やこれから利用するユーザーにメッセージをお願いします。
磯谷氏:私たちのミッションは「人生に寄り添う、ちょっといい体験」です。トイレを我慢する苦痛や、探して歩き回る無駄な時間は、人生において必要ありません。その時間を、もっと自分らしく生きるための時間に変えていきたい。徹底した利用者視点、信頼と安全、そして未開拓への挑戦。この3つのバリューを胸に、いつでも、どこでも、誰もが、「快適な空間」を確保できる社会インフラを実現します。
八木:これからがとても楽しみです。本日は、ありがとうございました。

【生態会のコメント】 「多くの人がトイレ行列に並んだ経験があるはずなのに、根本から解決するサービスがこれまで存在しなかった」という素朴かつ鋭い着眼点こそがRestpassの真髄です。磯谷代表はNTT西日本の職務に現在も身を置きながら、ご自身の原体験を原動力に、社会インフラのアップデートに心血を注いでいます。「寝る時間もないけれど、楽しくて仕方がない」とエネルギッシュに活動する磯谷代表。今後が非常に楽しみなスタートアップです。(ライター 八木曜子)





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