関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家。今回は株式会社Reviewの代表取締役・藤本茂夫さんをご紹介します。
マンパワー・ジャパンに入社後、最年少で支店長へ就任。2年連続全国トップの業績を構築し、関西を牽引。2013年に営業支援、採用、育成、実務の効率化までをプランニングする(株)アディションのCEOに就任。2016年、アディションで培った採用力を活かし(株)Reviewを設立。主力サービスである「macci」はインターネットに出ていないリアルな情報を集め、地図上に写真付きでプロットして提供するというもの。現在、全国展開を見据えて急成長している、注目の企業です。
取材:池田奈帆美(中小企業診断士・事務局)
生態会 池田:「街の情報」や「地図」と聞くと、「知りたいことはだいたいGoogle Mapが全部教えてくれるやん」と思ってしまったけしからん私ですが、macciのことを詳しく教えていただけますでしょうか。
株式会社Review 藤本氏(以下藤本):「OKグーグル、この近くに空き地は何件ある?」と聞いても、きっと答えられない。でも、たとえば、不動産屋さんが知りたいのは、どのエリアにどれくらいの空き地があって、今そこは借主を募集しているのか、すでに売却されたのか、という、今、商売に使える情報。私たちが提供しているのは、そういう街の生きた情報なんです。
池田:なるほど! 確かに、私のような一般ユーザーは、Googleで美味しい飲食店や道順を探すことがほとんどですが、企業が欲しい街の情報となると、まったく違ってきますね。
藤本:たとえば、求人サイトを運営する企業様なら、今、どこで、どんな求人の張り紙がされているかが事前に分かれば、営業効率は格段にアップします。
池田:依頼主に合わせて、取得すべき情報の切り口をいくつも持ってらっしゃるんですね。ところで、そういう生きた情報って、どうやって集めていらっしゃるのでしょうか?
藤本:何を隠そう、人海戦術です!(笑)。めちゃくちゃ歩いたり、自転車こいだりして、ものすごくアナログに、地道に、コツコツと集めて回っています。
池田:まさかのアナログ!(笑)
藤本:うちの魅力は、アナログで集めた情報を、最新テクノロジーを使ってデータベース化するという、異質を掛け合わせて生まれたサービスだと思っています。 もともと「情報鮮度が命!」という民間企業様からのニーズに応えるために始めた事業ですが、最近は自治体様からもご依頼をいただくようになりました。
池田:自治体というと、防災マップを作るための依頼、などでしょうか?
藤本:それもありますが、私たちは、「街の、どこに、何があるか」を集めて、解析して、データベース化できるのが強みなので、たとえば、街のどこにAEDがあるか、といった、形あるものを見える化するためのご依頼が多いですね。
池田:なるほど。街の情報の見える化って、すでに誰かがやっているようで、実は手付かずだったんだと初めて気づきました。ところで、情報を集める人材は、どのような雇用形態なのでしょうか?
藤本:調査員は、首都圏・関西を中心に約1300名を雇用しています。全員、働ける時間に働いてもらうというスタイルなので、会社としても人件費が固定費扱いではなく、お互いに無理の少ない雇用関係が築けています。
池田:会社は人件費が変動費化でき、働く人は働き方を選べる、と。
藤本:もともと人材会社でマネージャーをしていたという経験があって、かねてから「働きたい時に自由に働ける環境を作りたいな」という夢を持っていました。調査員の仕事は、「短時間だけアルバイトしたい」という主婦の方から、「運動不足解消のため」という会社員の方まで幅広く登録いただいていて、まさに理想的なスキームだと思います。
池田:なるほど。先日、関電サービス株式会社さんとの事業提携もプレスリリースされていました。
藤本:都心部から離れたエリアの情報を広く集めたい弊社のニーズがうまくマッチし、お互いにとってメリットの大きい事業提携になりました。
池田:藤本さんの基本スタンスは、一貫して「雇用を大事にしたい」というところにあるんですね。次に、macciのもう一つの柱であるITについて教えて下さい。
藤本:当社が提供している「macci」の基本となるプログラムの基本的な構造は、COOの奥野が、もともと趣味で作っていた街歩きアプリでした。
池田:趣味でっ!? それもまたユニークですねっ!(笑)
藤本:今思えば最初のお客様となる某企業様から、「こういうデータベースが欲しいんだけど」と相談された時、「え、あるよ」みたいな(笑)。「それだ!」ってなって、一気にβ版が完成し、ローンチしたという感じです。
池田:エンジニアの質は、経営を左右する重要な要素ですね。
藤本:うちは人材会社出身のIT企業です。どちらが欠けてもReviewらしさがなくなると思っています。人を大切にしつつ、クライアント企業が使いやすいデータをどう提供するか。エンジニアの力を最大限に発揮してもらいつつ、、データの編集力を磨いていくことが、入れ替わりの激しいIT業界で生き残っていくために重要だと思っています。
池田:人海戦術とITを掛け合わせた、リアルな街情報の提供は、なかなか模倣しにくいユニークなビジネスモデルだと感じました。ますますの事業発展を心から応援しています!
取材を終えて池田より
サービスを提供し始めたころは、提供する情報量が多すぎたために、クライアントが使いこなせず、結果、価値を感じてもらえなかったという失敗があったそう。その失敗を踏まえ、クライアントが求める質と量を見極めると同時に、提供するデータベースについても沢山の改良をされてきたそうです。そうした紆余曲折を経て磨かれた「macci」は、空き地を探している不動産や駐車場経営企業などから支持が広がり、現在は防犯・空き家・AED情報を集めたい自治体にも支持されるようになったそうです。「インフィニティ・ベンチャー・サミット」でもファイナリストに選出されたり、大企業との事業提携も順調に進むなど、今、急成長中の注目ベンチャー。今後のさらなる飛躍が楽しみです。
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