• 拓実 入江

もっと人と環境にやさしい「新しい移動」の創造:スマイルイービークル

更新日:9月3日

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は自動運転技術を活用し、電気自動車や車両系ロボットのシステム・サービスを提供している、株式会社スマイルイービークルの代表取締役、小寺正典(こてらまさふみ)さんにお話を伺いました。


                取材・レポート:西山 裕子(生態会事務局長)

入江拓実(学生スタッフ)、中村真都(学生スタッフ)


代表取締役 小寺正典


関西学院大学法学部 卒業。

パナソニック、アーサー・アンダーセンを経て、コンサルティングの株式会社BDIを設立。約20年にわたり経営コンサルタント業を営む。


その後、環境・電気自動車関連ビジネスへの転身を決意し、経営コンサルタント業を休業とし、バッテリ商社及び中堅自動車メーカー勤務を経て、2017年2月に株式会社スマイルイービークルを設立。



業界の状況や課題を、詳しく説明してくださいました

西山(生態会):本日はありがとうございます。まずは、事業概要について教えていただけますか。


小寺(スマイルイービークル代表取締役):我々は、「ラストマイルモビリティーサービス」を展開しています。今は、スタートとして、品質・性能・装備・コスパ・環境性能に優れた、リチウムイオンバッテリ式ゴルフカーを開発・販売しています。ラストワンマイルは例えば家から駅までなどの「ちょっとした移動距離」のことを指します。それを縮めて私たちはワンマイルと表しています。


私たちはあくまで管理者のいる限定的エリア、例えばゴルフ場やリゾートホテルの敷地内といった非公道を走る自動運転車を展開しています。そして短い距離であっても、「歩けない」「歩きたくない」という、高齢者のお手伝いをしたいと思っています。1980年代から人が乗車するゴルフカートが出てきたのですが、それまでは無かったんですね。そのため、ゴルフ場を8~9km歩く必要があったと。歩くことが好きじゃない人にとってみたら、苦行ですよね(笑)


一同:カートがあれば、すぐ移動できますね(笑)


小寺:これではたまらないと。もっとゴルフのすそ野を広げ、レジャーとして楽しめるように、乗用カートが出てきたんですね。ただ、また新たな問題が出てきまして。従来の乗用カートだと、カート路の上しか走れません。そのため、ゴルフ場の芝生の中に入れないんですよね。そこでフェアアウェイ上の打球のそばまで、安全に乗入できるように工夫しました。


ゴルフだけでなく、農作業にも自動化の利点は活かせると思っています。人手が足りない・熟年の技術継承が続かないといった課題を、危険・非効率な移動・運搬の改善や移動を伴う作業の無人化によって解決しようと。あくまでも「ラストマイル」です。少子高齢化・人口減少によって、自動化のニーズは高まっているといえます。


洗練されたデザインの自動ゴルフカート

小寺ラストマイルモビリティ―サービスの中核となる製品は「モビリティ―」です。これは私がこの事業を行う上で、1番強いエネルギーが注がれているところです。自動運転システムと安全制御システムを搭載したe-mobility=動くIT機器、運行管理システムを作っていきたい。その中で、2種類のプラットフォームを展開していきたいと考えています。1つ目が、現在行っているゴルフカートといった軽自動車クラス、2点目はこれから作るものですが、車いすに乗ったまま乗車できるような原動機付き自転車クラスのプラットフォームです。私たちは、高速道路を走る乗用車とは世界線が全く別物になります。当然、自動運転システムとモビリティーを合体させるのですが、「時速20km未満の世界」だからこそ、最先端の技術を導入して、少ない情報量で安定と安心を実現する、つまりアッセンブリ屋さんなわけです。プラットフォームをしっかりとつくることによって多様な分野に横展開していくことが可能です。


自動ゴルフカートについて熱い想いを語る小寺氏

小寺:私たちのビジネスはモビリティー単体を販売することではありません。限定エリアの中で安全で、便利に、快適に、楽しく運行するためのシステムとサービスを提供することです。例えばゴルフ場の場合、一つのゴルフ場で1日に50台もの車両が運行されます。安全運行のための点検や運行管理のシステムを提供し、サポートすることが重要です。また、人口減少と高齢化で市バスが撤退して行くような過疎地においては、自動化・無人化して安全な交通網にしていくことが可能です。ゴルフカートとはまた別ものになりますが、システム自体は基盤を据え置きで加工することで、管理することができます。限定エリアにおいて、自動運転・自動制御の環境で動作するe-mobilityを、安全・安心に運行する管理システムを作ります。


西山:動力は、エンジンなのですか?


小寺:エンジンではありません。リチウムイオンバッテリとモーターの組合せで動きます。

私たちのモビリティーは動くIT機器です。フレーム、サスペンション、ステアリング、ブレーキ、パワートレイン等で構成されるプラットフォーム上に、自動運転システムと連携してバッテリやモーター等を制御するシステムが搭載されているのです。こうした動くIT機器としての複数のモビリティを、運行管理システムで統合的に管理することによってバージョンアップを含むメンテナンスの効率化は勿論、リアルタイムのステータス管理や運行管理業務の高度化を実現することができます。また、そうしたサービスをアウトソーシングすることで、より付加価値が高いワンストップサービスを提供できます。


幼少期の「不足経験」が今の事業を形作った



シンプルで使いやすい、運転席

西山:もともとこのような事業をやりたいと、思っていらっしゃったのでしょうか?


小寺:そうですね。メーカーに新卒で入社した当時から、「電気自動車を作りたい」という話は周りにしていました。執筆などを行いながら、自分の考えを温め続けていた時に、すっと出てきたのが子供の頃の想いでした。私が幼少期から強く解決したいと欲していたもの、いわゆる「不足経験」、それが公害だったのです。50年経って思い出したのですが、小さいころに住んでいた場所は、排ガス・騒音・振動がひどいところでして。ああ、生きているうちに自分が解決したいと強く思っていたのはこれだ、と。気がつけばそこからはまっしぐらでした。そのため、開発する自動運転車は、CO2の削減や省エネにとことんこだわったエコ車なのです。


中村:なるほど、ご自身の経験から、強い想いを形にしたいと思われたのですね。最終的な応用先は、どのようなものになりますか?


小寺ビークルロボットと、ホイールチェアビークルですね。ビークルロボットとは車両系のロボットのことで、ゴルフカーのプラットフォームを活かしたオープンスタイルのトラック(2人+350kg)を中核製品として、物流の無人化・自動化することや、ドローンと連携して芝刈りや薬剤散布を自動で行うビークルロボットを検討しています。私が後輩たちに会社を託して引退する日までにやり遂げたいことは、車いすでそのまま乗り込むことができるホイールチェアビーグルです。10年後には、公道を走行する全ての車両に衝突防止システムが装着されており、ぶつかられる心配がありません。今から準備して、機が熟するのを待って、やり遂げたいと思います。


西山:本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

(左から)入江、小寺社長、中村

取材を終えて

小寺様の、終始目を輝かせながら、熱く事業展開やビジョンについて語っていらっしゃった姿が、印象的でした。幼少期の不足経験が、強い原動力となっているというエピソードからは、事業の核の想いが感じられました。


実際に自動運転のゴルフカートにも乗車させていただき、ハイスペックで可変性のあるボディに、誇りとこだわりを体感できました。「お客様のために」「環境のために」という強い想いと、多領域に展開されるテクノロジービジネスの今後の動きが、非常に楽しみです。(生態会 入江)