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  • 執筆者の写真橋尾 日登美

逆転の発想「小規模な植物工場」が日本の食未来に革命を起こす:スパイスキューブ

関西スタートアップレポートで紹介している注目の起業家。今回は、植物工場の導入支援や自社工場の運営・野菜の販売とtoBからtoCまで幅広く展開するスパイスキューブ株式会社 須貝 翼氏にお話を伺いました。大きな課題を抱える日本の農業を、新しいアプローチで解決する注目の事業です。


取材:西山 裕子(生態会事務局) 大西 亜依 (学生スタッフ)

レポート:橋尾 日登美(生態会ライター)


 

代表取締役 須貝 翼(すがい つばさ)略歴

1983年千葉生まれ。私立追手門学院大学 経営学部卒業後、大手人材派遣会社に入社。3年勤めた後、電設資材製造会社へ転職し、営業、マーケティング、商品開発などマルチにこなす中、新規事業である植物工場の運営に携わる。在学時から農業に強い興味を持っていた須貝氏は起業塾へ通いビジネスプランを練り上げ独立。輸入に頼らないと食が回らない現状に革命を起こすため、各企業の農業界進出を支援する。

 

■農業のハードル「環境要因」クリアにする手法に出会う

生態会 西山(以下、西山):本日はお時間いただきありがとうございます。まずは事業概要をお話しいただけますか。


スパイスキューブ株式会社 須貝翼(以下、須貝)


メインはBtoBの事業で、企業の農業参入を支援しています。電気と水で野菜をつくる施設「植物工場」ですね。その開発・運営支援、自社農業工場の運営、農業技術者の人材派遣なんかをしています。最近はtoC向けに自社ECサイトで野菜の販売もして、直に生産したものを届けています。


どうしても農業って自然環境に左右されてしまう。だから企業が参入しにくいという現状がありました。相手は自然なので、気候や害虫のような外部要因に振り回されます。僕自身も就農経験の中でビジネスに向いてないなと感じました。

植物工場はそれを解決してくれる。出会って学び、感動しました。


■業界の発想を逆にいくスタイル

生態会 大西(以下、大西)

こういった事業をされている企業は珍しいと感じます。


須貝

はい、あまりないと思います。

植物工場をやろうと思うと、大体は大規模化を目指すんですよね。そうなるとかなりの大手しか進出することができないんです。億単位の投資が必要なので。例えば、セブンイレブンが60億円を投じて自社製品に使用する野菜をつくる工場を持ちました。日本の企業の99.7%は中小企業。これでは発展しません。


僕らは小規模でも採算が出るような作り方をしよう、とスタートしました。コンビニ1店舗ほどの小さいスペースから可能です。販路は小売店ではなく、飲食店や食品工場。小規模でもはじめることができ、スーパーマーケットでも売らない。業界の常識とは逆なんです。


■原点は「自分でつくる野菜ほどうまいものはない」

西山

事業の着想はどんなところから得られたんでしょうか?


須貝

まず、大学時代に行った林業ボランティアで原木シイタケに出会いました。とてつもなく美味しかったんです。仕事を休んで弟子入りした鳥取のトマト農家での経験もあり、農業の面白さを強く感じました。同時に、農業の厳しさ、悪しき習慣、利益の出ない構造を目の当たりにします。


西山:高齢化など、取り沙汰されることの多い話題ですよね。


須貝

日本の農業人口って何人だと思いますか?

2010年に260万人いたところから、10年、いまや半分になってしまっているんです。日本の1次産業はすべて高齢化して、いまや輸入に頼らないと食が回らない状況です。この状況には多くの人が気付いているものの、アクションが打てていない。


農業界に企業が出ると革命が起きます。ほとんどの農業は家族経営。そこから組織経営にすることで生産高があがります。農業革新です。


もちろん自分自身で植物工場をやりたかったこともあり、スパイスキューブが生まれました。


■日本の食未来を地道に、かつ大胆に改革する

みずみずしい野菜

西山:今後の事業展開を教えてください。


須貝

これから資金調達もして設備投資を拡大しようと考えています。メンバーも増やしたくM&Aも実施したところ。将来的には農業生産法人にしたいと思っています。


今後やりたいのは、植物工場付きのカフェを開くこと。お客さんが自分で収穫する体験ができるスタイルにしたいんです。SNSを通して色々な方にこの活動を伝えたいし、知って欲しいです。

ゆくゆくは農林水産大臣になって農業全体を変えたいと思っています。もちろん、会社を存続させることが前提ですけどね。


橋尾:カフェに大臣とは幅広いですね!一般消費者に届けることも考えて親しみやすい社名にしているんですか?


須貝

「スパイスキューブ」という名前は『スパイス』という刺激を与える『箱(キューブ)』という由来です。僕という人間も周りの人に刺激をもらって出来上がっています。会社も、色々なことに挑戦して業界に刺激を与え続けたいと思っています。

 

取材を終えて

水耕栽培の水が循環する音が響く室内で、まるで川辺のようなBGMを聞きながらの取材となりました。農業の未来、創業への想い、課題に向き合う心を熱く語ってくださった須貝氏。規模こそスタートアップなものの、捉えている課題と実現しようとしている世界は日本の食を根本から救うものです。自分で収穫した野菜を口にできるカフェ、旗を振る政治家。多方面から描く未来に目が離せなくなるお話をたくさん伺えました。(ライター 橋尾)



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