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女性の健康を、涙一滴から守る!世界初の技術で乳がんリスクに関する情報を提供

  • 執筆者の写真: 鎌田 麟太郎
    鎌田 麟太郎
  • 9 分前
  • 読了時間: 7分

関西スタートアップレポートでご紹介している注目の起業家たち。今回は株式会TearExoの代表取締役CEOを務める堀川諒(ほりかわ りょう)さんに話を伺いました。

同社は、涙一滴からエクソソームを測定できる独自のチップ技術を持つ神戸大学発のスタートアップです。痛みを伴わない乳がんリスクに関する情報提供サービスを、法人向けの健康経営支援サービスとして展開しています。


取材・レポート:大洞静枝(生態会事務局)、鎌田麟太郎(ライター)


堀川諒(ほりかわ りょう)氏 略歴

1990年三重県生まれ。神戸大学大学院工学研究科応用化学専攻博士課程前期課程修了。祖父の訃報をきっかけに生命に貢献できる仕事を志す。神戸大学大学院工学研究科に進学し、共同創業者である竹内俊文教授(現:神戸大学未来医工学研究開発センター学術研究員)の研究室で医療応用を目指した生体分子認識材料の研究に従事。修士課程ではその研究成果が第1著者として国際的権威誌Angew.Chem.Int.Ed.(2016)に掲載された。卒業後、大手メーカーでの研究職や人材会社での営業職を経験した後、株式会社SAILERを創業し代表取締役を務める。2022年より現職。


涙液から乳がんリスクに関する情報を提供


生態会 大洞(以下 大洞):本日はよろしくお願いします。まず、御社の事業概要についてお聞かせください。


代表取締役CEO 堀川諒氏(以下、堀川氏):私たちは、誰もが疾病の恐れから解放される世界を目指して、涙液から乳がんリスクに関する情報を提供する事業を展開しています。



弊社のコア技術は、神戸大学発の技術「TearExo🄬法」です。エクソソームと呼ばれる細胞外小胞に着目し、独自開発したセンシングチップを用いることで、微量の涙液から迅速かつ高感度に測定できる世界初の技術です。涙液の採り方も、ドライアイの検査で使うシルマー試験紙を目尻に当てるだけなので、採血と比べて心理的にも身体的にも負担が小さく、場所も選びません。職場や薬局、クリニックといった生活圏の中で、ハードル低くご利用いただけます。



細胞外小胞センシングチップ
細胞外小胞センシングチップ

ライター鎌田(以下、鎌田): 日本の乳がん検診の現状について、どのような課題を感じていらっしゃいますか。


代表取締役CEO 堀川諒氏
代表取締役CEO 堀川諒

堀川氏:乳がんは女性の9人に1人が罹患し、婦人科系がんの中でも突出して多く、経済損失だけでも4000億円を超えます。にもかかわらず、受診率はいまだ50%に届いていません。


その理由は一つではありません。マンモグラフィーの痛みや、検査自体への恥ずかしさといった心理的なバリア。そして、病気が職場に知られることでキャリアに影響するのではないかという不安。こうした複合的な要因が、受診率の低迷につながっていると見ています。


大洞:確かに、乳がんの検査は他の検査よりもハードルが高く身構えてしまう感覚がありますね。そうした課題に対して、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか。


堀川氏:私たちは特に、働く女性に向けてのソリューションを提供していますので、涙液を用いた乳がんリスクに関する情報提供に加えて、セミナーの開催やアプリの開発により、継続的な健康管理を支援しています。まず、セミナーで乳がんへのリテラシーを高め、検査への心理的なハードルを下げる。そのうえで、涙を用いた測定キットで定期的に乳がんリスクに関する情報を確認していただく。さらに、アプリでは、日頃から胸を見たり触ったりして変化に気づく「ブレストアウェアネス(乳房の変化を意識する生活習慣)」の実践をサポートしながら問診データを蓄積し、個人ごとの傾向を可視化します。


測定結果を渡して終わりにしないというのが、私たちの一番の特徴だと思っています。結果は保健師や人事部にもフィードバックし、医療機関の受診まで伴走します。技術を提供するだけでなく、本当の意味での行動変容につなげることを大切にしています。



大洞:結果の出し方にも工夫があるそうですね。


堀川氏:はい。私たちの測定結果の最大の特徴は結果を具体的な数値で示すことです。他社の検査では、AIが解析してがんのリスクスコアを出す、という形が多いのですが、それだと何を根拠にしているのかが人事部や保健師の方にはわかりにくいという声をよく聞きます。

そこで私たちは、HER2(上皮成長因子受容体2)やER(エストロゲン受容体)といった乳がんとの関連が報告されているタンパク質の量を、そのまま数値として示すことにしています。さらに、一人ひとりの時系列変化を追いかけることも可能です。1回の測定だけでなく、3カ月後、半年後と繰り返し測定することで、傾向として数値が上がり続けているのか、たまたまその時だけ高かったのかを把握いただけます。


すでに約100〜150名を対象としたPoCを完了

大洞:現在のビジネス展開について教えてください。


堀川氏:今は健康経営や女性活躍推進という切り口で、法人向けのBtoBとして展開しています。大手不動産会社様、大手飲料メーカー様にご協力いただき、すでに約100〜150名を対象としたPoC(概念実証)を完了しています。計画中の案件を含めると、対象者は約400〜500名規模に達する見込みです。最終的にはtoCの病院にまでサービスを広げたいという構想は持っていますが、自分たちだけで一件一件営業していくのは現実的ではありません。ですので、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認取得に向けた研究も進めつつ、企業をチャネルとしたBtoBtoCという形で広げていく戦略を想定しています。


大洞:海外展開については、どのようにお考えですか。


堀川氏:海外展開については、大阪・関西万博に出展した際、ヨーロッパやアジアの企業の方々から「いつこっちに来るんだ」という声をたくさんいただきました。日本は国民皆保険という安心感があるぶん、予防への意識がそれほど高くありません。一方、海外は保険制度が違うので、病気にならないようにするという予防意識が非常に高いです。将来的には、経済産業省の補助金や、Nakanoshima Qross(中之島クロス)のライフサイエンス分野特化型イノベーションキャンパス「O-Nexus」に入居していますので、そこのネットワークも活用しながら、現地調査、PoCという順番で進めていくつもりです。最終的に、海外で得たデータや実績を日本に持ち帰る、リバースイノベーションのような形になるのではないかと考えています。


鎌田 : 万博という場で、すでに海外からニーズの手応えを感じていらっしゃるのは大きいですね。保険制度の違いによって予防意識の差が生まれるというお話も、非常に納得感があります。海外で磨いた知見を日本に還元するという発想は、黒船来航とも言いましょうか、まさにこれからのヘルステック企業らしい戦略だと感じます。


研究職から起業の道へ。きっかけは恩師との再会


大洞:研究職から法人営業へ、そして起業へと、キャリアの振れ幅も大きいですね。当初から、経営者になることを目指していたのでしょうか。


堀川氏:いえ、全くそうではありませんでした。経営者を志していたわけではなく、むしろ研究者としてのキャリアに行き詰まりを感じたことが、最初の転機でした。環境を変えてみようと、畑違いの営業職へ転職することを決めました。


その後、小さな会社を立ち上げてスモールビジネスをやっていたのですが、その2ヶ月後くらいに、たまたま竹内先生(共同創業者でTearExo🄬法の生みの親、同社 CSO)とお会いする機会があったんです。ちょうど先生が起業を考えていらっしゃるタイミングで、ジョインさせていただきました。

右:堀川代表 左:生態会 事務局大洞
右:堀川代表 左:生態会 事務局大洞

鎌田:まさに運命的な出会いですね。営業職への転職という遠回りが、結果的に今のご縁につながったというのも興味深いです。実際に関西で実際に起業されてみて、いかがでしたか。


堀川氏:振り返ってみると、関西で始めて本当に良かったなと、しみじみ思いますね。特に大きかったのは、創業1年目に「J-StartupKANSAI」に選んでいただいたことです。そこを起点に、OIH(大阪イノベーションハブ)さんからは1000万円のバウチャー付きプログラムなどで継続的な支援をいただき、さらに大阪産業局の万博向けアクセラプログラムであるHeCNOS Awardにも選出いただいたことで、大阪・関西万博への出展にもつながりました。こうした一連の支援があったからこそ今の事業がある、関西のアセットには本当に助けられてきたと感じています。


大洞:本日はありがとうございました!関西でのますますのご活躍を楽しみにしています!


生態会のコメント


女性の9人に1人が罹患し、単独でも4000億円を超える経済損失を生み出している乳がん。それにもかかわらず受診率は50%に届かないのが現状である。従来の乳がん検査は、難易度の高さや手間の多さゆえに、女性ばかりがその負担を一方的に背負う構造になっていた。女性の社会進出が進むいま、女性特有の健康課題への対応は、経営層が直視すべき喫緊の課題である。涙一滴の技術は、海外でこそ先に評価され、根づいていく可能性がある。だからこそ、逆輸入を待つのではなく、その前にここ日本で、誰もが当たり前に活用できる身近な技術として広まってほしい。乳がんで悲しみの涙を流す人が、少しでも減ることを願う。

(ライター 鎌田麟太郎)



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