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  • 執筆者の写真西山裕子

木材を使用したインテリアに溶け込むIoTデバイス「mui(ムイ)」:mui Lab

更新日:2022年12月7日

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、スマートデバイス「mui」を開発・販売する、mui Lab株式会社 代表取締役 大木和典(おおき かずのり)さんにお話をお伺いしました。


取材・レポート:

西山裕子(生態会事務局長)・永井玲子(ライター)・田代蒼馬(学生ボランティア)

 

大木和典 代表取締役 略歴


1979年神奈川県生まれ。上智大学卒業後、京都の大手印刷会社NISSHAに入社。2012年新規事業開発と市場開拓の為、アメリカへ6年赴任。


2017年に社内ベンチャーとしてmui Lab株式会社を設立。2019年4月、MBOを実施し独立。

 

■アメリカでの新規事業で、”思いがけず”起業することに


生態会 西山(以下、西山):本日はお時間いただき、ありがとうございます。まずは、創業の経緯を教えてください。


株式会社mui Lab 大木さん(以下、大木):起業するまでは、新卒で入社したNISSHA株式会社に勤めていました。在職中にアメリカに、6年赴任。複数の新規事業開発に携わっており、そのうちのひとつが「mui」でした。


結果的に脱サラベンチャーとして起業することになりましたが、元から起業をしようと考えていた訳ではありませんでした。



本社近くのカフェで実際に使われているmui

西山:muiは、どのように生まれたのでしょうか。


大木:建築業界に自社商品の市場を作るため、ニューヨークの家具の展示会に出展しました。そこで好評を得たデバイスが、muiです。muiの由来は、老子の説いた生き方「無為自然」から名付けました。


西山:発想としては、テクノロジーを自然のものに搭載するということなのでしょうか。


大木:その逆です。基本的に、インテリアにはテクノロジーや情報機器が合いません。そこにマッチするものをという考えで、インテリアや家具側から情報端末やスイッチを考えました。NISSHAがタッチパネルの世界最大手なので、それを使えないかというアプローチからできた物です。


元から起業を考えていた訳ではなかった

西山:大木さんは帰国子女でいらっしゃったのですか。


大木:いえ、大学では法学部でしたし、特に海外赴任の希望もしていませんでした。会社の異動でたまたまアメリカへ赴任したのが、渡米のきっかけです。


赴任したのは2012年で、リーマンショックの影響がまだ色濃かった時期でした。1年英語を勉強しながら、市場を掴む為に調査をしていましたね。


ライター永井(以下、永井):事業開始早々から、CES(米国・ラスベガスで開催される電子機器の見本市)で受賞されていますね。アメリカで起業されたとのことでしたが、いまは国内での販売がメインなのでしょうか。


大木:元々は、海外狙いです。コロナの影響で行き来ができなくなったので、やむなく戦略の立て直しを行っています。


muiは実物にインパクトがあるので、実際に見てもらわないと魅力が伝わりずらい。これまでは、世界トップクラスの展示会だけを狙って出展し、現物をぶつけていくという戦略でやってきました。


今はプロダクトを日本国内で普及させていくとか、ソリューションを作っていくということに注力しています。


mui動画


■京都を拠点にしたのは、”たたずまい”をデザインしているから


西山:アメリカで起業して、帰国されたのはなぜですか。


大木:子会社化するという承認を親会社から得て、2018年に帰国しました。プロジェクトとして管理職がいながら動くのではなく、自分が権限を持ちスピード感を持って事業を進めていくためです。NISSHA本社のある京都に戻ったのですが、京都に住んだのもこの年からです。


西山:子会社化してまで、なぜご自身で進めることにしたのですか。


大木:理由は大きく2つあります。ひとつは、資金の使い方です。大企業の子会社として利益の中で資金をやりくりする使い方ではなく、ダイナミックな資金を投下するいわゆるベンチャーファイナンスの方法を取り入れることで事業を加速させたかったからです。


もうひとつは、人材の獲得です。スタートアップをやりたい人は、大企業に入りたい訳ではありません。そこでmuiをスタートアップにすることで、人材を取り込む戦略を取りました。


ダイナミックな資金を投下するには、株主構成を変えることで増資できる形にする。MBOするしかないと思ったので、結果的に独立することにしました。


西山:独立することに関して、悩まれましたか。


大木:悩まなかったです。とにかく、やるという気持ちでした。キャリアにもなるかなと思ったので。


西山:自分の会社になっても、京都にい続けようと思われたのはなぜでしょうか。東京に戻ろうとは考えませんでしたか。


大きな窓から京都の街並みを感じる、mui Lab本社

大木:東京は、考えていませんでした。


私たちはプロダクトをデザインしているのではなく、「たたずまい」をデザインしていると考えています。物を対象にして突き詰めていくと、生活の中で違和感のあるスマートスピーカーやスマホのようなプロダクトになってしまいます。


そこで、チームができた京都にオフィスを構えました。京都のたたずまいから、自然に影響を受ける。その上で、プロダクトの開発にあたることに、意味があると考えました。渋谷やシリコンバレーに本社を構えるのとは、全然違う物ができるのではないかと期待を込めて、京都に本社を置いています。


田代:デザインについて、どうお考えですか。


大木:デザインをしていないようなデザインが、muiの特徴だと思っています。ただ、当社は実装していくのがミッションで、デザイン会社ではありません。エンジニアリングとデザインが融合して、ちゃんと使われる物になるということが重要。「実装されて初めて社会の役に立つ」というところを、根本的な価値として持っています。



■日本で2番目にVCが多い、京都のアドバンテージ


西山:資金調達は、順調に見えますがいかがでしょうか。


大木:大変ではありますが、無尽蔵にVCを回るということはしていません。ポートフォリオやステージが違ってくるので、ターゲットを見据えて20社ほどに提案してきました。


京都は日本で2番目にVCが多いので、「京都発のベンチャーに投資したい」という追い風があり恵まれていると思います。今後も資金調達を検討していて、特にエンジニアとデザイナー、ビジネスサイドの人材を強化したいと考えています。フェーズが変化しているので、ターゲットの業界と業務提携を結び拡大していくなど、今年はビジネスとしてしっかり形を作っていく時期だと思っています。


西山: 資金調達も控え、今後の事業展開がますます楽しみですね。今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


取材風景(左からmui Lab大木社長、 永井、西山、撮影:田代)
 

取材を終えて

実際に現物を見ると、思わず目で追ってしまう魅力に溢れたmui。

「実物にインパクトがあるので、見てもらわないと魅力が伝わりずらい」と言う大木社長の言葉を実感しました。大手企業に在籍されていたからこその、ビジネス感覚が融合されたお話は、大変興味深く感じました。京都発のmuiが、世界で実装されていくことが楽しみです。(ライター・永井)






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