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  • 執筆者の写真西山裕子

日本で唯一の仮想空間3Dクラウドオフィス「RISA(リサ)」を開発・提供:OPSION

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、リモートワークの課題を解消する、仮想空間上のクラウドオフィスを開発・提供する株式会社OPSION深野 崇(ふかの たかし)さんです。


取材:西山裕子(生態会事務局長)

永井玲子(ライター)

 

深野崇 代表取締役 略歴


1992年大阪生まれ。大阪経済法科大学在学中に公認会計士の資格を取得。2016年新卒でトーマツ監査法人に入社。トーマツベンチャーサポートでの兼業を経て、2019年より現職。




 

■現状は自分で変えるしかないと、不登校から会計士へ


生態会 西山(以下、西山):本日はお時間いただき、ありがとうございます。まずは事業概要を教えて下さい。


株式会社OPSION深野さん(以下、深野):リモートワーク環境下でもアバターで出勤し、そこでちょっとした相談や声かけなど、オフィスにいる時のように気軽にコミュニケーションが取れるクラウドオフィス「RISA(リサ)」の開発、提供を行っています。


クラウド上の仮想空間にオフィスを設けることができる「RISA」

西山:深野さんは、いつから起業しようと思っていたのですか。


深野:大学生の頃から、起業したいと思っていました。


私は中学・高校はほとんど通っていませんでした。人生をやり直そうと心機一転。猛勉強をして大学受験に挑んだのですが、結局失敗して悔しい思いをしました。


そこで、大学受験よりレベルの高いものでやり返そうとしました。将来起業したい気持ちがあったので、会計士を目指したのです。


西山:そもそもなぜ、中学校に行かなくなったのですか。


深野:興味がない授業を朝から晩まで聞いていることが、耐えられませんでした。中学生の時に一番幸福な生き方だと思っていたのが、「楽をして生きること」だったので、嫌なことはしないと、学校にも行きませんでした。



西山:そんな考えだったのに、公認会計士の勉強はどうして我慢できたのでしょうか。


深野:中学〜高校2年生までは楽なことをして過ごしましたが、勉強を始めてみた時に、目的に向かって頑張ることの充実感を覚えました。「楽をして生きるのが幸福」ではなく、「目的を持って生きていく人生が最もが幸福だ」という風に考え方がバージョンアップされました。


夜間高校に通っていたので、朝まで遊んで日が沈む頃に目覚めてという生活でした。しかし、日中に学校生活を送っているかつての同級生と比べて、楽なことばかりしていると味気ない人生になってしまうんではないかと考えるようになったのが、きっかけのひとつです。


西山:私にも子供がいるので、親の立場で考えてしまうのですが……。当時親御さんはなんとおっしゃっていたのですか。


深野:私は母が40歳の時の子供で、母子家庭で育ちました。母は朝5時から出かけて週7でパートを掛け持ちし、なんとか私を育ててくれました。学校に行かない私に対して文句はいうものの、最後は好きなように生きろと言ってくれていました。


当時はなんでこんなに貧乏なんだと母に反発していましたが、そんな風に言ってくれていたのは今思えばすごいことだと思いますし、心から感謝しています。


中学高校と自分がこんな風なのは、家が貧しいせいだと、母親や社会に不平不満を言い続けていました。しかし、自分で変えるしかないと思うようになり、勉強をしてちゃんと大学に行こうという気持ちになったんです。


西山:高校生に、講演会で聞いてほしいくらいですね。大人になっても人のせいにし続ける人もいるのに、高校生の頃に自分で気づかれるのが素晴らしいと思います。


そこから大学在学中に公認会計士を取り、監査法人に入られたのですか。



■なにも構想がないうちから退職期限を決め、起業へ


深野:はい、監査法人トーマツに入りました。直属の上司が熱心な方で、夜中までかなりの熱量で指導してくれました。めちゃくちゃ仕事をして、仕事の基礎を叩き込まれました。とても充実した期間でした。


その一方で、3年で辞めて起業すると入社当時から言っていました。


西山:辞めた当初は、どのような事業で起業しようとしていたのですか。


深野:何も事業構想がない状態でした。


しかし、独立を先延ばしにすると、起業しそびれると思いました。事業構想の有無に関わらず、辞める時期は決めていたんです。


辞めてから、社会にどんなビジネスが必要とされているのかを考えました。私にとって、中学高校の時が人生で一番辛い時期でした。幼少期であるほど、自分の努力とは関係がない理由で、環境差が生まれますが、それはおかしいと思っていました。その当時SFが好きだったこともあり、「現実を超越する仮想世界」を作ればいいのではないかと思い至りました。


私は108歳まで生きて、22世紀を見届けてから死のうと思っています。あと80年の人生を何に賭けようかと考えた時に、現実を超越する仮想世界を作ることが、やりがいもロマンもあるなと思いました。



■一度は事業を終了したものの、問い合わせが増え事業再開へ


西山:その発想からRISAに行き着いたのはどのような経緯ですか。


深野:2012年にロンドンオリンピックが開催されたことを契機に、イギリスでテレワークの普及率が高まりました。それと同じ現象が日本でも起きると思い、バーチャル空間上のオフィスを作りました。


ところが、予想に反してテレワークはさほど普及せず、RISAは一時期サービスを終了し、当時の開発チームも解散しました。


西山:次の一手は、どうされたのでしょうか。


深野:当座の運転資金を稼げる事業を、しようとしました。


しかし、スタートアップの事業を大きくしていくには、「トレンド」を掴むことが大事です。新規事業を考えた時に、RISA以上にコロナ禍でのトレンドを掴んだ事業を思いつきませんでした。そこで2020年7月に、開発チームを作り直してサービスを再開することにしたんです。


永井:サービスを再開して、問い合わせはどの程度きたのでしょうか。


深野:2020年7月に再開後、2020年12月までで問い合わせは400社ほどあり、コニカミノルタジャパン様、LION様、チャットワーク様など大手企業様を中心に150様ほどにトライアル導入していただいています。


西山:バーチャル会議ツールの「Remo(リモ)」とは、どう違うのでしょうか。


深野:3D空間でバーチャルオフィスサービスをしているのは、日本でRISAだけです。臨場感がポイントです。3Dの方が、距離やどちらを向いているかなど、情報量が多いと思います。


3D空間でアバターを使うことで出る臨場感が重要だという

永井:導入企業からは、どんな点が評価されていますか。


深野:圧倒的な話しかけやすさを、評価いただいています。

声かけと言われるものには、大きく「呼び出し」と「声かけ」の2つに分かれています。大抵のサービスは「呼び出し」になり、相手の都合を無視した行動になり、呼び出しをする側のハードルは高くなります。


その点RISAはそこにいることができる、居場所としてのサービスがコンセプトなので、リアルのオフィスにいるかのような感覚で話しかけることができます。2Dでは臨場感が足りず、ツールとしては限界があるので、3Dであることが重要です。



インバウンドで400件以上の問い合わせがきていると言うRISA

西山:今後の展望を、教えてください。


深野:2021年には資金調達をし、開発・デザイン・セールスチームの人員を倍増して事業拡大をしていきます。


来年には300人が1箇所でアクティブに使えるようにして、現在のオフィスとしての利用から展示会の開催などもできるようにします。


3〜5年後にはバーチャル空間上に街ができていて、様々な店舗が出店できるなどBtoC向けのサービスに拡張していけると思っています。


西山:コロナ禍でのニーズに合い、大きな可能性を感じます。これからの躍進が楽しみですね!

 

取材を終えて

RISAの可能性を探るため、自社のCTOとも一度も顔を合わせず働いているという、深野さん。バーチャルオフィスツールとしてだけではなく、ゆくゆくは仮想空間の街を作りたいと言うお話など、どれも未来の話を聞いているようで、わくわくしました。


また、「状況に不満を言っても何も変わらない、自分で変えていくしかない」という力強い深野さんの言葉は、聞いていて背筋が伸びる思いでした。コロナ禍で注目されRISAが広く普及することで、新しい社会のあり方が作られていくのではと感じています。


ライター・永井






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