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ITで生産者と消費者に談笑のひと時を:YACYBER

更新日:3月1日

関西スタートアップレポートで紹介している、注目の起業家たち。今回は、野菜直売所・農園検索サービス「YACYBER」や自社独自の野菜直売所「YACYBERstore」を展開している、YACYBER株式会社の代表取締役 唐澤 太郎(からさわ たろう)氏に取材しました。


取材・レポート:近藤 協汰(生態会学生ボランティア)・奥田 菖斗(同上)・西山 裕子(生態会事務局長)



唐澤氏 略歴:1982年生まれ。2005年朝日大学卒業。2005年、キッチンメーカーに入社。2006年電機メーカー に入社。


2012年インターネット関連会社に入社。2014年、webシステム開発会社 の取締役に就任。2015年、分社化により株式会社YACYBER設立 、代表取締役に就任。


生態会 近藤(以下、近藤):まず初めに、YACYBER株式会社の事業内容を教えていただけますか。


YACYBER株式会社 内藤(以下、内藤):私たちは、農業に関するインターネットメディア事業無人直売所事業食育事業などを提供しています。


インターネットメディア事業では、農園や野菜の無人直売所検索サービス「YACYBER」、また食と農の情報メディア「やさコレ」を展開しています。「YACYBER」では、直売所の検索だけでなく、農業体験や味覚狩りの実施農園なども調べられるのが特徴です。

直売所・農園検索サービス「YACYBER」の写真

食育事業では、幼稚園の方に、作付けから販売までを一貫して行える農業体験を提供しています。実際に作付けから行いたいという要望もあり、付き合いの長い生産者にご協力をいただいています。お迎えに来られる親御さんには、携帯電話だけを持ってきている人も多く、幼稚園内でキャッシュレスでの無人販売所も提供しています。


生産者と子供の関わり

無人販売所事業では、空きスペースに設けた無人販売所によって、生産者と消費者を直接繋げています。店舗内のモニターにQRコードを表示していて、消費者はそれを読み込むだけで決済ができます。


例えば、2020年の4月にはAkippa株式会社さんと提携し、空き駐車場内で無人直売所を運営しています。スーパーへ買い物に行くことが控えられていた時なので、3密を防ぐという形で、来店予約システムを導入しました。

また、大阪信用シティ信用金庫さんとも連携し、店舗内での直売所を設置しています。ここでは、銀行に訪れたついでに野菜を購入することができます。



YACYBERへの取材の様子。皆さん、とても快く応対してくださいました!

YACYBERstoreの写真

近藤:唐沢さんがYACYEBRという事業を立ち上げた経緯をお教えください。


唐沢:実は、YACYBERは私がスタートさせたわけではありません。ある企業で元々運営されてきた事業「YACYBER」を、私が代表取締役となって分社化した形となります。私も企業内で生産者と関わっていましたので、このサービスに強い魅力を感じ、この事業を法人化させました。


近藤:農業には、どのような思い入れがあったのでしょうか?


唐沢:独立以前は、企業内で農業者様に対してホームページの作成などをしていたこともあり、生産者と密接に関わることが多かったんです。その時に、「生産者は生産に関してはプロだが、販売の知識が少ない」ということをひしひしと感じていました。


彼らが使用しているトラクターなどはとても高く、農園でフェラーリが走り回っているようなものなんです。それなのに、生産物の値段はとても安くなっている。また、形が少しでも悪ければ、農産物が捨てられてしまう。


また、生産者と関わっていく中で、「スーパーに並んでいるものだけが全てではない」ということも知りました。実際に農園で野菜を食べさせてもらったら、すごく美味しかったんです。本当に、こんな美味しいものを食べたことがない、というほどで。



このような様々な要素が重なって、ここには絶対ニーズがある、と直感していたんです。それと同じ時期に、ちょうど直売所の検索サービスという事業が企業内に出来始めていたため、私はこの事業を推進していこうと決めました。


近藤:身近なところに課題が存在していて、それを解消するサービスができた、という訳ですね。


唐沢:まさにその通りです。消費者と生産者をつなげるという観点では、子供がいる世帯は野菜をすごく欲しがっています。


基本的に、所得が高くなるほど野菜の消費は多くなります。なぜかというと、農産物より穀物の方が安価だからです。そのため、先進国の日本は当然ニーズが大きい。農産物の消費が多いのだから、美味しい野菜を消費者にもっと食べてもらいたい、という気持ちがあります。

生態会学生ボランティア 奥田、近藤

生態会 奥田:一次産業には農業だけでなく、畜産業や漁業がある中で、なぜ農業に焦点を当てたのでしょうか?


唐沢:それには、農業の方が比較的自由に販売できるという理由もあります。例えば畜産業だと、農業と違い、販売までに必ず屠殺場を通さなければなりません。農業はこういった流通上の縛りが少ないため、直売所で販売する参入障壁は他と比べ小さくなります。


近藤:農業の方が、消費者と生産者を直接繋げやすい、ということなんですね!


唐沢:そうです。また、農業が「作る」生業だからということでもあります。例えば漁業は、基本的には「自然に存在するもの」を獲るという形ですが、農業は作付けから始まります。


私たちは、育てたものに対して愛着を持っているため、「作る」農業を対象にしています。そのこともあり、私たちの直売所が初めて設置されたのは、農業体験をした幼稚園なんです。


幼稚園がその一例ですが、私たちは「誰から買うか」ということ、つまりトレーサビリティに価値を置いています。これまではインターネットが普及していく中で、社会の効率性は確かに高まってきたのですが、人と人との直接的な繋がりが希薄化してきたように感じています。私たちは、その状況を変え、消費者と生産者がじかに触れ合える場を創ることに貢献していきたいですね。



生産者と消費者

近藤:YACYBERstoreを運営していく中で、実際に生産者と消費者の関係性が築かれていくこともありましたか?


熱心に語る唐沢氏

唐沢:それは感じますね。直売所を覗きにいくと、やはり生産者と消費者が楽しそうに談笑しているのをよく目にします。


また、大阪シティ信用金庫さんの店舗に私たちの直売所を設けていて、そこに佐賀県産のレンコンが配置されています。すると、直売所での購入がきっかけとなって、佐賀県の農家さんに大阪から注文が増えたんです。


これも一種のつながりで、リアルでもネットでもこのような2者の関わりが増えていますね。私たちは、テクノロジーを通して、この「つながり」という価値観をさらに追求していきたいと思っています。


近藤:なるほど!本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!


取材を終えて:この取材を通して、唐澤さんの課題観、そして「つながり」の意識を感じました。確かに現代は効率化が進み、人のつながりは少なくなっているかもしれません。それに対し、ITを用いてリアルの「つながり」を創出するYACYBERは社会にとって善なビジネスだと言えましょう。


また、ITという先進的なイメージとは反し、自転車に乗って実直に生産者の元を駆け巡るというその泥臭さも魅力的です。もちろんプロダクトや事業への集中はいうまでもなく、「顧客」を真に見据え向き合っているのは、成功に近い企業だと感じます。数年後には、あなたの周りにもYACYBERstoreと新鮮な野菜が並んでいるかもしれません!(生態会 近藤)






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